彩湖ウルトラマラソン70km——今年もまた、35km地点でのリタイア。
けれどその瞬間、私の中には「敗北」よりも、前に進んでいる感覚がありました。
去年よりも準備できた。走りも安定していた。
それでも心が折れた——そこにウルトラマラソンの“本質”があるのかもしれません。
本記事では、当日のラップデータや補給戦略、リタイア理由を徹底分析。
さらに、100kmウルトラ完走→サブテン挑戦へと続く「成長の軌跡」をまとめました。
ウルトラ初心者から経験者まで、きっと気づきのある内容です。
彩湖ウルトラマラソンとは?アクセス・コース・大会概要
ウルトラマラソン。それは、42.195kmを超えて走り続ける者だけが知る、孤独と歓喜の旅。
「彩湖70kmウルトラマラソン」は、そんな“超距離”の挑戦を、身近な場所で、でも確かに深く体感できる舞台です。
会場は埼玉県戸田市にある「彩湖・道満グリーンパーク」。水と緑に囲まれた自然豊かなコースが、走る人の心と脚を静かに揺さぶります。
正式名称は「戸田・彩湖フルマラソン&ウルトラマラソン」。ウルトラ70kmとフルマラソンが同時開催され、2025年には記念すべき第20回を迎える伝統の大会。
初めてのウルトラ挑戦に選ばれる一方で、上級者にとっても「脚試し」の定番。それだけ“走る価値”がここにはあるのです。
魅力はそれだけではありません。1周約5kmの彩湖周回コースは、フラットで走りやすく、エイドも充実。
何度も応援が受けられる、仲間とすれ違える、小さな「成功体験」が重なる——そんな周回コースならではの魅力が詰まっています。
ただし、同じ景色が続く“単調さ”は、メンタルの強さも試される構成。後半になるほど、本当の自分と向き合う時間が始まります。
制限時間は9時間(ゴール閉鎖17時)。平均ペースは1kmあたり7分42秒以内。
「ペース配分」「補給」「装備」——準備不足では完走は難しい。それでも挑むのは、その先に“心が進化する瞬間”があるから。
彩湖70km、それは記録では測れないレース。
リタイアしても、涙が出ても、それでも前に進みたくなる何かがある。
このブログでは、そんな「走る理由」を見つけたい全てのランナーに向けて、彩湖ウルトラの魅力とリアルをお届けします。
【2025年】彩湖70kmでリタイア…レース当日の記録
2025年4月12日。3年連続で挑んだ彩湖70kmウルトラマラソン。
今年こそ完走を——そんな強い気持ちを胸にスタートラインに立ちました。
結果は、35km地点でリタイア(DNF)。
しかしこのDNFは、ただの敗北ではありませんでした。過去とは違う、自分なりの前進がそこにはあったのです。
このパートでは、当日の走行データや気象条件、補給計画の実際を振り返りながら、何がうまくいき、どこに落とし穴があったのかを冷静に検証していきます。
ウルトラ初心者から中・上級者まで、次回に活かせるヒントがきっと見つかるはずです。
1kmごとのラップから見る走りの変化
彩湖70kmのスタート。午前8時、穏やかな気温とやや湿った空気の中、ランナーたちはそれぞれの旅路を走り出しました。
私の戦略は明確でした。「前半は抑えて、脚を温存する」。
ウルトラマラソンにおける“突っ込み過ぎ”の怖さは、前年のリタイア経験から痛感していたからです。
前年の彩湖ウルトラ(71km)でも、61km地点で足が止まりリタイアしました。
しかしその経験は、ただの失敗ではなく、100kmウルトラを走るための「準備の失敗例」として貴重な学びになりました。
▶ 【戸田彩湖ウルトラマラソンから学んだ100kmの攻略と低血糖によるメンタルへの影響】
実際、1〜25kmのラップは非常に安定しており、平均5:15〜5:30/kmで推移。
心拍数はLT以下(145〜152bpm)、
フォームも崩れず、「狙い通りの走り」ができていました。
ところが、26km地点で突如異変がでます。
足が止まった感覚はない。でも、気持ちがスッと切れてしまった。
いま振り返れば、これは脚ではなく「心が折れた瞬間」でした。
「まだ走れる」「でも、もうやめたい」——。
肉体は動くのに、精神が前を向かない。
走りたい自分と、もう無理だと告げる自分が、心の中でぶつかり合っていました。
それでも身体はまだ動いていた。
だからこそ、今回のリタイアは「身体の限界」ではなく「気持ちの限界」だったと、今なら言えます。
以下は、当日のラップ一覧(カロス計測)です。データとしては終盤まで崩壊しておらず、最後まで“走れる状態”だったことが見て取れます。
km | ラップタイム | 平均ペース | 平均心拍 | ピッチ | ストライド |
---|---|---|---|---|---|
1 | 0:05:26 | 5:26 | 140 | 173 | 1.08m |
2 | 0:05:23 | 5:23 | 143 | 174 | 1.08m |
3 | 0:05:17 | 5:17 | 145 | 174 | 1.09m |
4 | 0:05:19 | 5:19 | 146 | 173 | 1.09m |
5 | 0:05:16 | 5:16 | 147 | 173 | 1.10m |
6 | 0:05:45 | 5:45 | 144 | 171 | 1.06m |
7 | 0:05:31 | 5:31 | 145 | 172 | 1.07m |
8 | 0:05:17 | 5:17 | 147 | 174 | 1.10m |
9 | 0:05:21 | 5:21 | 148 | 173 | 1.09m |
10 | 0:05:16 | 5:16 | 148 | 174 | 1.10m |
11 | 0:05:53 | 5:53 | 146 | 171 | 1.05m |
12 | 0:05:29 | 5:29 | 147 | 172 | 1.07m |
13 | 0:05:17 | 5:17 | 148 | 174 | 1.09m |
14 | 0:05:15 | 5:15 | 149 | 174 | 1.10m |
15 | 0:05:09 | 5:09 | 150 | 174 | 1.11m |
16 | 0:05:41 | 5:41 | 147 | 172 | 1.06m |
17 | 0:05:22 | 5:22 | 148 | 173 | 1.08m |
18 | 0:05:13 | 5:13 | 149 | 174 | 1.10m |
19 | 0:05:17 | 5:17 | 150 | 173 | 1.09m |
20 | 0:05:13 | 5:13 | 151 | 173 | 1.10m |
21 | 0:05:41 | 5:41 | 149 | 171 | 1.06m |
22 | 0:05:30 | 5:30 | 149 | 172 | 1.07m |
23 | 0:05:15 | 5:15 | 150 | 174 | 1.10m |
24 | 0:05:15 | 5:15 | 151 | 174 | 1.10m |
25 | 0:05:09 | 5:09 | 151 | 175 | 1.11m |
26 | 0:06:31 | 6:31 | 148 | 169 | 1.00m |
27 | 0:05:22 | 5:22 | 149 | 171 | 1.06m |
28 | 0:05:10 | 5:10 | 150 | 172 | 1.08m |
29 | 0:05:13 | 5:13 | 151 | 172 | 1.09m |
30 | 0:05:15 | 5:15 | 151 | 173 | 1.10m |
31 | 0:05:29 | 5:29 | 152 | 172 | 1.08m |
32 | 0:05:54 | 5:54 | 150 | 170 | 1.05m |
33 | 0:05:15 | 5:15 | 152 | 172 | 1.09m |
34 | 0:05:20 | 5:20 | 152 | 172 | 1.09m |
35 | 0:05:24 | 5:24 | 153 | 171 | 1.08m |
平均ペースは5:29/km。
彩湖の微妙なアップダウンにも適応し、リズムよく走れていた前半。
しかし、26kmあたりからのペースの波は、肉体よりもメンタルの崩れを映し出していました。
そして、35km地点のエイドで、身体は動く。でも、もう走りたくない。
そんな矛盾した状態が、「心が完全に折れた」ことをはっきりと教えてくれました。
ペース戦略・補給・気象条件などの振り返り
彩湖ウルトラマラソン2025——35kmでのリタイアは、決して脚の限界ではありませんでした。
はっきり言えるのは、「心が先に終わった」という事実。
エネルギーも脚力も、まだ残っていた。けれど、心だけが「もうやめよう」と静かに告げた。
それが今回の最大の敗因であり、最大の学びでもありました。
-
●ペース戦略:
入りの数kmは5:15/km前後で想定どおりだったが、序盤の気持ちの高ぶりで冷静さを欠いた。
結果として、余力を残すべき30km以降に崩れた。 -
●補給の課題:
「胃に優しく」とジェルを控えすぎ、低血糖に近い状態へ。
集中力が切れ、気持ちが弱る隙間を生んでしまった。 -
●気象条件:
気温22〜24℃、湿度やや高め。
身体への影響は軽微と思っていたが、じわじわと“消耗”していたのだと後で気づく。
正直なところ、ゆっくりなら完走出来たと思います。
でも、35km地点のベンチでふと湧いたのは、「もう、いいかな」という気持ち。
それは突然ではなく、補給ミス・環境ストレス・内なる不安が少しずつ積み重なった末の静かな終わりでした。
ウルトラマラソンでは、走力以上に“心の体力”が問われる——
あらためて、それを身にしみて実感したレースとなりました。
実際に走って分かった課題と今後の改善点
彩湖ウルトラマラソン2025(70km)は35kmでのリタイア。
しかし、ただの失敗ではありません。1kmごとのデータを振り返ることで、「何ができていて」「どこに落とし穴があったのか」が明確になりました。
ここでは、その分析結果と今後に向けた具体的な改善点を紹介します。
① 前半の走りは◎:基礎力は十分
- 1〜25kmは5:13〜5:30/kmで安定
- 心拍もLT以下(145〜152bpm)と理想的な範囲
- ピッチ・ストライドも安定 → フォーム崩れなし
② 26kmから“メンタル崩れ”の兆候が発生
-
26kmだけが突出して遅い(6分31秒/km)
→ この区間ではエイドで温かい麺を食べたため、滞在時間が長くなった。
ペースの乱れは補給優先の判断によるものだが、気持ちのリズムが一度途切れたことも否めない。 - 心拍や脚には余力あり → 精神的なスイッチ切れ
- 気づかぬうちに、気持ちのスタミナが消えていた
③ 補給ミス → 集中力&脚攣りを引き起こす
- 「胃に優しく」とジェルを後回しに → 低血糖傾向
- 終盤でケイデンス・ストライド共に低下
- 心拍は上がらず → エネルギー切れ+脚の売り切れ
④ 今後の改善ポイントまとめ
課題 | 改善策 |
---|---|
ペース戦略 | ネガティブスプリットを意識 |
補給管理 | 15kmごとに「ジェル+塩タブ+水」固定パターンを構築 |
筋持久力 | 30〜40kmのLSD走+坂道走で「脚の粘り」を養う |
脚攣り対策 | マグネシウム・BCAA・クエン酸+ギア見直し(ソックス・インソール) |
リタイアは終わりではなく、次に進むための最強の学びです。
▶ 【関連】心が走り続けるから、次がある|リタイア後の心の旅
ウルトラマラソンのリタイアから学び続ける
彩湖ウルトラマラソン——それは、私にとって“挑戦の舞台”であると同時に、“学びの原点”でもありました。
実は今回で2年連続のDNF(途中棄権)。
昨年の第19回大会(71km)では61kmでストップし、そして今年は35kmで立ち止まりました。
ただし、今回のリタイアは「また同じ失敗を繰り返した」という後悔ではありませんでした。
明確な違い——それは“準備の深さ”と“走りの質”。
昨年は補給もペースも感覚頼みでしたが、今年は戦略を立て、データを意識し、走りの1kmごとに意味を持たせていました。
それでもリタイアしてしまった。
でも、それは「またダメだった」という絶望ではなく、「失敗の質が変わった」という手応えでもありました。
前進の証は、“結果”ではなく“気づきの深さ”に宿る——そう思えた自分がいました。
そして私は、こう決めました。
もう、彩湖は走らない。
それはリタイア続きの悔しさではなく、「周回コースがどうしても苦手」という、個人的な性格からの決断です。
景色の変わらない周回を淡々と走るよりも、ゴールに向かって“進む感覚”があるコースの方が、私は好きだと気づきました。
彩湖での経験は、そうした自分の“適性”を教えてくれた。
この気づきは、次のウルトラ挑戦に必ず活きると確信しています。
彩湖のリタイアを経て見えてきたのは、ウルトラマラソンにおける“心のスタミナ”の重要性でした。
筋力やVO2maxだけでは太刀打ちできない——それがウルトラの世界。
そして、こんな言葉が心に刺さります。
「フルマラソンが速い人が、ウルトラも速いとは限らない」。
まさに、“ウルトラにはウルトラの走り方”があるのです。
より詳しくこの気づきや、完走率・リタイア傾向・メンタルの崩れ方について深掘りした内容は、以下の記事にまとめています。
「自分はなぜ止まってしまったのか?」と悩む方にもきっと役立つはずです。
▶ 戸田彩湖ウルトラマラソンから学んだ100kmの攻略と低血糖によるメンタルへの影響
DNFは敗北ではない。「次に生きる失敗」こそが最大の武器です。
自分の失敗パターンを知り、次の挑戦ではその“穴”を1つずつ埋めていく。
それが、ウルトラマラソンに向き合うということです。
▶ 【関連】心が走り続けるから、次がある|リタイア後の心の旅
次の目標へ:会津100kmでサブテン達成を目指す
彩湖ウルトラマラソン70km——2年連続のリタイアを乗り越え、私はついに「100km完走」を経験しました。
挑んだのは、第3回 会津磐梯山ウルトラマラソン100km。
結果は、しっかり完走。でも、まだ満足していません。
次なる挑戦は、サブテン=100kmを10時間以内で走り切ること。
タフな山岳コースで結果を出すには、走力だけでなく戦略・補給・メンタルのすべてが求められます。
彩湖でのDNF、会津での完走——その経験のすべてを武器に、次は「結果で証明する」ステージへ進みます。
サブテンの鍵となるのは、後半の粘りとエネルギー管理。
フルマラソンとは違い、「余力を残し続ける走り」が必要です。
そのために、練習の中でも「ネガティブスプリット」や「30〜40kmのLSD+坂練」など、強化ポイントを明確にして取り組みます。
私にとって、100kmを走ることは「挑戦」だけでなく、「自己理解の旅」。
サブテンは、過去の自分との決別であり、新しい自分との再会でもあります。
▶ 【第3回 会津磐梯山ウルトラマラソン100km|完走レポート】
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