市民ランナーのためのマラソンシューズ選び
市民ランナーにとって、マラソンシューズの選び方は非常に重要です。特に最近話題になっている厚底シューズは、その優れた性能から多くのランナーに支持されています。
しかし、「厚底シューズならどれでも良い」というわけではなく、自分の走力や目標タイムに合ったシューズを選ぶことが、マラソン成功の秘訣となります。
コロナ禍の影響が和らぎ、マラソン大会が再び活発になり、多くの市民ランナーがフルマラソンに挑戦する機会が増えてきました。これに伴い、シューズメーカー各社も競争を繰り広げ、様々な厚底シューズが市場に登場しています。
厚底シューズの登場と進化
厚底シューズの革命は、2017年にナイキが一般発売したモデルから始まりました。
その特徴は、反発力に優れたカーボンプレートを、軽量で高反発のフォームで挟み込んだ構造にあります。
この構造により、従来のシューズよりもソールが厚くなり、ランナーの推進力を大幅に向上させました。
ナイキの厚底シューズを履いたランナーが次々と男子マラソンの世界記録や日本記録を更新し、その速さが話題となりました。
他のシューズメーカーもこれに追随し、カーボンプレートを搭載した厚底モデルがマラソン界で主流となりました。
自分に合った厚底シューズを選ぶポイント
しかし、厚底シューズが万能というわけではありません。
特にフルマラソンで3時間半を切るような上級者ランナーにはカーボンプレート搭載の厚底シューズが最適ですが、4〜6時間台を目指すランナーには必ずしもそれがベストとは言えません。
重要なのは、自分の走力や目標タイムに合ったシューズを見つけることです。
選び方のポイント:
- フルマラソン完走を目指す初心者ランナーの場合:
- クッション性を重視
- 安定性を重視
- 自己記録の更新を目指す中級者ランナーの場合:
- 軽量性を重視
- 反発性を重視
シューズ選びで大切なのは、自分の走力や目標タイムを理解し、それに合った厚底シューズを選ぶことです。
実際に試着して走り心地を確かめることが重要です。
最適な厚底シューズを見つけることで、快適なランニング体験と目標達成に一歩近づくことができるでしょう。
厚底登場直前の2016年と2022年の男子マラソンの世界リストを比較すると、以下のようにタイムが短縮されています。
順位 | 2016年タイム | 2022年タイム | 短縮時間 |
---|---|---|---|
50位 | 2時間8分01秒 | 2時間6分08秒 | 1分53秒 |
100位 | 2時間9分28秒 | 2時間7分14秒 | 2分14秒 |
150位 | 2時間10分46秒 | 2時間8分04秒 | 2分42秒 |
個人差はあるものの、世界トップクラスでも約2~3分のタイム向上が明らかです。
厚底シューズの盲点:市民ランナーが知っておくべき事実
マラソンシーンで旋風を巻き起こしているカーボンプレート搭載の厚底シューズ。その驚異的なスピード性能は、多くのランナーを魅了しています。しかし、その影には、新たな怪我のリスクが潜んでいることをご存知でしょうか?
従来の薄底シューズの時代には、ランナーの怪我は主に膝や足首などの下肢が中心でした。
しかし、厚底シューズが普及するにつれて、大腿骨や仙骨の疲労骨折など、股関節周辺の怪我が増加していることが報告されています。
この原因は、カーボンプレートの特性にあります。
厚底シューズは、着地時にカーボンプレートがしなることで、その反発力を推進力に変えます。
しかし、レース終盤などで疲労が蓄積すると、このカーボンプレートをしならせることが難しくなります。
その結果、ランナーは体重を前にかけて無理にプレートを曲げようとし、股関節周辺に過剰な負荷をかけてしまいます。
これが、股関節周りの怪我増加の一因と考えられています。
さらに、カーボンプレートをしならせるだけの筋力がないランナーや、ゆっくりとしたペースで走るランナーにも、同様の問題が発生します。十分な推進力を得られず、かえって身体に負担をかけてしまう可能性があります。
つまり、カーボンプレート搭載の厚底シューズは、誰でも履けば速く走れるという魔法の靴ではありません。
フルマラソンで3時間半を切るような、高い筋力とスピードを持つ上級者ランナーにとっては有効な武器ですが、4〜6時間台を目指す市民ランナーにとっては、必ずしも最適な選択ではないのです。
自身の走力や目標タイムをしっかりと見極め、適切なシューズを選ぶことが、マラソンを安全に、そして楽しく走り続けるために重要です。
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